とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第59回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


感謝の気持ちを伝えたくて

「感謝の気持ちを伝えたくて」

埼玉県 H・K(無職 60代)

 新型コロナウィルスの流行も収束に向かい私は運動不足解消のため毎朝早起きし、ウォーキングをすることが日課となりました。
 当初は三十分ほどの軽いウォーキングでしたが、次第に一時間、二時間と時間も、歩く距離も伸ばしていき、同時にウォーキングコースも少しずつ変えていくようにしました。
 毎朝歩いていると、朝焼けの実に美しい景色に出会えたり、可愛らしい野草を見つけたり、小鳥のさえずりを聞けたり、素敵な建物に出会えたり、というように今まで気づかなかった様々な出会いを経験でき、地域の良さを再認識することができるようになりました。
 やがて、私は、川沿いの、土手の上の遊歩道をウォーキングコースとするようになりました。するとそこで、毎回決まった時刻に、年配の八十歳前後と思われる女性を見かけるようになりました。
 その人は、少し足が不自由のようでしたが、毎回ビニール袋を持って、土手の上を歩きながらごみを見つけては拾うという活動を、まったくのボランティアとして取り組んでいるようでした。ある時などは、雨の日にも関わらず、ごみ拾いをしていたこともありました。
 その人は無心にごみを拾っているため、毎回私には気付かないようでしたが、私は何かその人に声をかけてあげたく思うようになりましたが、人見知りの私はなかなか声をかけられません。でもある時、思い切ってこう言ってあげました。
「おはようございます。毎朝みんなのためにごみ拾いしてくださって、本当に有難うございます」と言ってあげたのです。すると、「いいえ、どういたしまして。そう言ってもらえてうれしいですよ」とにっこり笑って言ってくれたのでした。
 私は思い切って感謝の気持ちを伝えられて良かったと思いました。同時に私もこの女性のように、何かささやかでもいいので地域に貢献していきたいと思うようになりました。