とっておきのワンシーン
ごあいさつ

─ 審査員からのごあいさつ ───
 私たち審査員もそれぞれの仕事を持ちながら、今まで一生懸命働いて参りました。
そんな自分たちを振り返ってみれば・・・、
若い時から胸にペースメーカーを入れ30年以上社長業を続けている者もいれば、離婚を経験した者もいる。
そして、難病の奥様を男の子だけの家庭で、最後まで介護された者もおります。
人生いろいろです。
長年続いているミーティングでは、何が平凡で、平凡であることが果たして価値あることなのか。
そんなことに話がおよぶこともありました。
ただ何気ない平凡な営みに価値があるのか。
私たち自身がこの「とっておきのワンシーン」を続けながら問うてきたことのひとつです。

平凡の定義づけは別として・・・、

この「とっておきのワンシーン」を通して、私たちは人さまの大切な思いや、大事にしまっていた事柄に少しだけ触れることを許され、公募するたび毎に、作者の想いに共感できる幸せを一同共有して参りました。
そして、その答えは、平凡であることに価値があるというのではなく、さまざまな人の平凡な営みの中に、人として愉しく生き抜いていくための数多くの気づきがあるということなのです。
なぜなら、全国の作者の皆さんから数多くの気づきを頂き、人として成長させて頂いたのは、私たち自身だったからです。

トラックにはねられ、血を流して死んでしまった犬やねこを見かけても何もできなかった自分。
日々の仕事に追われ、家族との団欒を忘れかけていた自分。
ゆっくり歩き、ゆっくり聞き、ゆっくり見ることの心地よさ、充実感を忘れてしまっていた自分。
飢餓で苦しんでいる人たちがいることを知っていても、何もできなかった自分。

そんな自分が少しずつ確実に変化し、これから大きく深く生きて行けると感じられる今、
平凡な中に隠された大切な何かに気づく旅を、皆さんとご一緒できることを何より深く感謝いたします。

忙しい中、忙しいからワンシーンで。

全国の作者の皆さんから寄せられた心あたたまる絵と文が、「とっておきのワンシーン」となって広く社会に広がり、読者の皆さんの家庭や職場で身近な人たちとの思いやりのある人間関係が、波紋のように広がっていくことを審査員一同心より願っています。

平成21年9月1日