とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第60回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


当たりガチャ

「当たりガチャ」

福岡県 E・S(介護福祉 50代)

 最近使われる『ガチャ』という言葉は嫌いだ。平気で「親ガチャ」会話をする人間になってはいけない、と私は思う。
私は生まれてからずっと貧乏。でも、親は一生懸命に私を育ててくれた。もちろん、その頑張りを小さい頃は理解できない。 だから、お金持ちを羨やんだり、普通にもなれないことを恨んだりもする。
 私が小学生の頃、皆のうちに当然にある固定電話や洗濯機がなかった。
父はよくテレビを持って質屋へ行き、お金ができたらそのテレビを持って帰った。その繰り返しだったから、家にテレビのない日が多かった。
昔は今のように簡単に物の売買ができず、何かを売ってお金にするためには、こっそり質屋へ足を運ぶ必要があった。
 昔のテレビは大きな箱のような形で、父はよっこいしょとテレビをかつぎ質屋まで歩く。
中古の洗濯機を、手洗いで洗濯する母のためにかついで持って帰ってきて、腰を痛めた。
車はなく、私の給食代を納めるのも一苦労。そんな生活がずっとだった。

 お金持ちがいいに決まってる?

いや、貧乏を知ってる人間のほうがいいに決まっている。
 ガチャだとしたら、当たりは何なのか?
お金持ちができない経験こそ当たりではないか?
「親ガチャ」の話題に加わるなら、私は当りガチャである。
親が苦労する姿を、感謝するとともに絶対に忘れない。