とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第60回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


完璧なダンゴ虫

「完璧なダンゴ虫」

神奈川県 Y・Y(主婦 30代)

 息子がまだ小さかった頃、昆虫が大好きでよく手のひらにダンゴ虫やカナブンを乗せていました。
たまたまその日は近所に住んでいらっしゃる女性が通りかかり……。手に持っていたダンゴ虫を女性に見せに行ってしまったのです。
女性には昆虫が苦手な方も多いですし、私も得意ではないので一瞬ヒヤリとし、そっと息子に虫を見せない様に促そうとしていたのですが、その女性から出た言葉が「触覚も脚も全部揃ってる。完璧なダンゴ虫や!」だったのです。
完璧なダンゴ虫というワードに驚いて声が出ないでいると「小さいお手々で優しく持ってたからや、良く元気なダンゴ虫つかまえられたねぇ」など息子の事も沢山褒めてくださっていました。
 育児では昆虫や生き物に優しくしなきゃいけない。無闇に見せにいってはいけない。いけない、いけないばかり言っていたなぁ。どんな事にも物にも褒めたり言い方が違うだけで心への伝わり方が違うのだと感じた出来事でした。
その後「お友達の居そうな所探してあげようね」と元の脇道に戻してあげたダンゴ虫でした。虫が苦手だったかもしれないのに嫌な顔ひとつせず、ダンゴ虫を褒め、息子を褒め、やさしく元の場所に戻せる様に促してくださったその女性にその時の自分は沢山の優しさを頂きました。
いつか私が見知らぬ子にお手々の中の昆虫や、何を見せられても「完璧なダンゴ虫や!」の言葉を思い出して優しさのバトンを渡せたら。と思います。