とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。
皆さんもブックマークを付け、時々お立ち寄り下さい。

─ 第59回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


気持ちのこもった「ありがとう」

「気持ちのこもった「ありがとう」」

新潟県 K・O(学生 10代)

 高校生の頃、私は近所にあるスーパーでレジのアルバイトをしていた。自分で自由に使えるお金が欲しくて始めたアルバイトだったから、社会勉強の為だとか、自分の成長の為とかそういった立派な志を持っていた訳ではない。バイトを始めて一か月が経った頃には仕事にも少し慣れてきて、早く終わらないかな、と考えてしまうようになっていた。
 バイトを始めて半年が経った頃。そのスーパーでは人手が足りておらず、土日の忙しい時間帯にシフトが入っていることが多かった。レジも混んでいてお客様方の、はやくしてくれないかなぁ、という心の声が聞こえてくるように感じた。バイトに対する意欲は正直なかったといえる。だが私はお客様に不快な思いをさせないように、どんなに忙しくとも笑顔で明るく接することを心掛けていた。定型化した言葉であるが、「ありがとうございました。またお越し下さいませ」を言うのも忘れないように。
そんな風に働いていたらある日、一人の女性客に「あなたはアルバイト?」と声を掛けられた。そうだと伝えると「私、あなたがいるとこのスーパーに来たくなっちゃうのよね」とその女性は言った。私はとても驚いてしまった。「ありがとうございます」と伝えるとお会計を終えてから「頑張ってね」と言って店を出て行った。
 その日私は、名前も知らない女性に言ってもらえた言葉が嬉しくて、はじめてやりがいというものを感じることができた。いつも自分が気を遣っていたことに気付いてもらえたような気がした。こんなことがあってから気付いたことは、お客様が「ありがとうございます」と言って下さることが意外とあるということだ。人に感謝されるのはやはり嬉しいものだ。いつもの「ありがとうございました。またお越し下さいませ」に感謝の気持ちを込めて言えるようになった。今では客として店員さんに感謝の気持ちを伝えている。