
─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───
思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。
これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。
─ 第64回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───
「三分間の宝物」
それは月曜日の朝八時、福岡・天神駅でのことでした。予想以上のラッシュ・アワーでの人混み…。
前日から、二泊三日の初めての金沢からのひとり旅。方向音痴とスマホの不慣れが重なり、リラックスの旅をする予定が、緊張の連続です。
博多まで行くのに、このホームで大丈夫なのか不安になり、思わず近くの駅員さんに聞きました。
人混みをさばくのに忙しいなか、私が乗ろうとした電車は、博多まで行かないこと、次に入ってくるのに乗ればよいことを、穏やかな声で教えてくれました。
助かりました。何より、その駅員さんのあたたかで、優しいまなざしに安心したのです。ひとり旅の心もとなさが、スーッと消えてホッとしたのでした。次の電車を待つ間、ホカホカとあたたかな気持ちになっていました。
到着した電車に乗り込む時、その駅員さんに、ありがとうの会釈をしたら、また同じ瞳で、ウンウンと頷いてくれました。
彼にしてみれば、客に対しての当たり前の仕事をこなしただけなのかもしれません。が、にじみ出る人としての優しさ、あたたかさが伝わってきました。
コスパ、タイパ、AI、ロボット…。合理性が優先されていると感じる社会に、生きづらさを感じる日々。そんな中、ゆっくり自分を見つめようと出かけた旅で、あたたかい人に出会えました。
この出会いのおかげで、ひとりの旅は穏やかな色に染まり始めました。
博多から下関に向かう車窓から、日に光る福岡の町並みが見え、美しく流れます。
私はあの駅員さんから、残り少ない人生の、人としての在り方を教わったと思いました。
たった三分程のできごとでしたが、宝物のような出会いだったと思います。