とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第66回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


光るスプーン 輝く顔

「光るスプーン 輝く顔」

福岡県 K・N(40代)

 「しーくん、行くよ。暑いけん、帽子被っておいでよ」
この春、高校に上がった長女が小学生の弟に声を掛ける。
身長はいつの間にか妻を追い抜き、すっかりお姉さんの顔をしている。
「うん、分かったーー」
普段、ぼやぁっとしている長男が慌てて出かける準備をしていた。
こちらは、成長期はまだ先なのか。あどけなさが多分に残るザ・小学生だ。
 夏休みの午前10時。九州では、毎日のように熱中症アラートが出ている。
何もこんな暑い中に外出しなくても、と私と妻は二人の様子を見て、顔を見合わせた。
「ママ、帰ってくるのはちょっと遅くなるけん。お昼ご飯は、冷蔵庫に入れておいてください」
そんな台詞を残して、我が家の凸凹コンビは自転車で颯爽と駆け出して行った。

『ただいまぁ』
玄関の扉を開けると共に、凸凹のユニゾンが響いたのは、午後2時を回った頃のこと。
「どこに行っていたの?」
二人の昼食を冷蔵庫から取り出しながら問いかけると、
「小学校の近くにある子ども食堂に行ってきたんだよ」と長女。
「え、あなた達が行ってもいいの?」と妻が訝し気な顔をすると長女は、
「私たちが食べてもいいんだけど」と、弟くんの方に目をやった。視線を感じた長男は口に頬張ったチャーハンをお茶で流し込んで、
「お姉ちゃんはねー、友達とご飯をお皿に注いでたんだよ。ぼくは、ようちえんくらいの小さい子のお世話してたの。食べてません。いや、本当だよ」
自分があたかも何かの犯人のように言い繕う長男の様子を見て、思わず他の3人は吹きだした。
 地域に子ども食堂があるのは知っていたし、その数が増えてきているのは話に聞いていた。ただ、「あぁ、素敵な取り組みだな」「そういった支援は要るよな」とどこか、他人事のように捉えていた。そこを長女は、友達と直接話を聞きに行って、手伝えることがないか尋ねたらしい。
「出来ることから、助けあい。だよ、パパ」
自慢げにかざすスプーンが、きらりと輝いていた。