とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第62回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


一匹の犬

「一匹の犬」

新潟県 Y・Y(学生 10代)

 私は小学校六年生の時、柴犬を家族に迎えた。その犬は殺処分されるまで残り一週間の保護犬だった。
 幼いころから犬を飼ってみたかった私は、両親にお願いしたがダメと言われていた。もし飼うなら何の犬種がいい、名前は何にするといった話で妹と盛り上がっていた中、ある日突然父が犬を連れて帰ってきた。
その犬は成犬で大柄な柴犬だった。飼えないと思っていたので我が家に来たとき、とてもうれしくて舞い上がったのを今でも覚えている。
名前は家族で考えてゴンになった。ゴンはどこから来たのか父に聞くと、保健所に保護された犬で残り一週間で殺処分される予定だったことを教えてくれた。こんなに可愛い犬が殺されてしまうなんて。と衝撃だった。
私は「せっかく我が家に来たのだから絶対に幸せになってもらいたい」と決意した。だが動物を飼うということは簡単なことではなかった。
 新しい環境によるストレスのためか、ゴンは飲まず食わずで小屋にこもってしまった。何とか手渡しでエサを与え続け優しく撫でたりとふれあっていくうちに、どんどん元気になっていき家に来たときよりも表情が明るくなった。散歩やボール遊びで楽しそうにしている姿を見て私は嬉しかった。
ふと保健所にいる犬猫たちが頭をよぎった。檻の中で殺処分されるのを待つ姿。思い浮かべただけで胸が苦しくなる。
今の私にできることはゴンを最後まで責任を持って飼うことだ。ペットを飼っている全ての飼い主が命に責任を持つこと。そしてこれからペットを飼おうと思っている方は一度保健所にいる子たちを思い出し里親になることを考えてほしい。
これ以上悲しい動物達を増やさないためにも私達のできることをやっていきたい。