とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第58回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


魔法のオムライス

「魔法のオムライス」

愛知県 O・S(学生 10代)

 その日は同じ帰り道の友達と言い合いになり、素直に仲直りをすることもできず、一人でしょんぼり帰った日でした。
 帰り道、自分の家に近づくにつれて大好きな匂いが漂ってきました。その匂いの正体がわかって、家まで走って帰りました。玄関を開けると母の「おかえり」という声が聞こえ、私はランドセルを乱暴に置き、母のいる台所に行きました。
 母は匂いの正体のオムライスを作っていました。私の大好きなオムライスです。たくさんの具材と半熟のたまご、その上にケチャップでうさぎが描かれているオムライスです。まだ洗っていなかった手を洗い、スプーンとコップを用意して食卓に座りました。そしてオムライスを食べたとき、沈んた気持ちだったことはすでに忘れていて、そのおいしくてたまらないものを食べることに必死でした。
 そんな私の顔を見て「元気になった?」と母が聞いてきました。「今日友達とけんかしたのを知ってるの?」と私は驚いて聞きました。
「ううん。でも顔を見たら分かったよ」と母は答えました。
 このとき私は、母が魔法使いみたいだと思いました。私の気持ちを知っていて、大好きなオムライスを作ってくれたんだと思ったからです。
もちろん、それはただの偶然だったと思います。しかし、まだ幼く夢見がちだった私にとって、とても衝撃でとても嬉しいことでした。
 それ以来、入試や部活の大会など私の気持ちが不安定になる時期は、オムライスを作ってくれるようになりました。母の作るオムライスが、私を元気にする魔法なのです。今は私が魔法使いになれるように、母と特訓しています。