とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第58回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


もう一人の母親

「もう一人の母親」

愛知県 R・T(学生 10代)

 私は小学生の頃、それはそれは緊張しいの恥ずかしがり屋さんでした。皆の前でスピーチをしたり、学芸会でセリフを言うときには、過剰に緊張して喉がつまり、上手に話すことができませんでした。クラスで友達をつくるときもこの性格が邪魔して、皆と仲良くなるまですごく長い時間がかかりました。私は、皆が普通にしていることができない自分が、幼いながらも嫌いでした。
 しかし、小学3年生の冬、そんな私の生活が一気に変わったのです。兄が中学校で卓球部に入ることを決め、クラブチームに通いはじめました。そのクラブチームに兄を迎えに行ったとき、私を変えてくれた人と出会いました。卓球クラブのコーチです。
コーチは、内気な性格を見るなり、開口一番に「卓球やらない?」と私に話しかけ、となりにいた私の母に「ぜひ妹さんも預からせてください!」と言いました。当時私は卓球なんかには1ミリも興味がありませんでしたが、コーチの熱量に負け、やってみることにしました。
 クラブチームでの練習は、衝撃的なものでした。皆が卓球を教わっている中、私はガッツポーズの練習からはじまったのです。試合で点を取ったときの喜び方を、くり返し練習してました。チームの皆も私の周りに集まってガッツポーズや、得点後の「よし!」という声を教えてくれました。
この練習で初めて私は、自分を表現することができたのです。初めての試合でも、ボロ負けでしたが、1点でも取れたとき、ベンチにいるコーチが一緒にガッツポーズをしてくれました。私はコーチに、卓球よりも何よりも最初に、自分を表現することを教えてもらい、育ててもらったのです。
それからは、コーチは私に毎日皆の前で一言話させたりして、皆の前で話すこともできるようになりました。コーチに出会ったおかげで性格も明るくなり、人生が楽しくなりました。コーチは私のもう一人の母親です。