─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───
思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。
これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。
─ 第58回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───
「小さなヒーロー」
コロナや東京オリンピック・パラリンピックが話題になるよりも少し前のことです。
視覚障害者が盲導犬と伴に路線に転落して亡くなられたというニュースがありました。そのニュースは、それ程大きな問題としてメディアに取り上げられる事もなく、直ぐに消えてしまったと思います。
その頃、私は眼科で働いていました。日頃から視覚障害者が近くにいたため、そのニュースに心を痛めました。
病院、眼科を一歩外に出ると、白杖を持っていたり盲導犬を連れていたりしない限り、一見して「見えにくい方」に気付くことはありません。医療従事者であってもです。手を差し伸べることも困難でしょう。
視野障害のある女性が、買い物中に子供とぶつかり、その母親に怒鳴られたと話していました。下の方の視野が欠損していることを説明し謝罪したそうですが、理解してはもらえなかったと辛そうでした。
間もなくして、電車を利用し研修を受けに行った帰りのことです。兄妹と思われる二人。二メートルくらい離れたところを、白杖を手に盲導犬を連れた男性が不安気にプラットホームを歩いていました。注意を向けながら観ていると、小学生くらいのお兄さんが、黄色い線の内側に立ち、両手を広げました。妹さんも同じように立ち、静かに盲導犬と男性を見送りました。お兄さんは口を結び、妹さんはお兄さんの顔を見て微笑んでいました。近くで、兄妹の母親と思われる女性が見守っていました。
勿論、子供の危険性を指摘される方もいると思います。でも、その気持ちが嬉しかった。犬と男性が線路に落ちないように立ってくれたんです。小さな体で、自分達ができることを実行した兄妹に感動しました。
この日は、研修の内容よりも小さなヒーローに出会えたことが、忘れられない学びになりました。とっておきのワンシーンです。