とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第53回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


思い出のとんぼ

「思い出のとんぼ」

新潟県 K・H(学生 10代)

 「お前は下手っぴだなわ」そう言って笑うひいおじいちゃんが大好きだった。
「ほら、簡単だろ?」とシワだらけの右手にとまったとんぼを僕に見せる。何度やっても出来ない僕はいつかひいおじいちゃんみたいに、出来るようになりたいと思った。
 時は流れ、ひいおじいちゃんは空へ旅立ってしまった。それから一年くらいが経ち、おばあちゃんと散歩に行った時の出来事だ。
「今日はお盆って言ってね、ひいおじいちゃんが帰ってくる日なんだよ。ひいおじいちゃん、恥ずかしくて虫さんとかになって隠れているかもねぇ」とおばあちゃんが言った。
空には無数のとんぼが優雅に飛んでいた。僕はおじいちゃんに教えて貰った事を思い出した。空に人差し指を掲げると、一匹のトンボが僕の指にピタリととまった。
「ひいおじいちゃんだ!」と僕は声を上げた。何故かわからないが、その時ひいおじいちゃんと通じ合えた気がした。
 今となればバカバカしいと思うかもしれないが、それが僕にとっての思い出に残るワンシーンだった。