とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第52回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


誕生日の思い出

「誕生日の思い出」

長野県 N・Y(パート 40代)

 超未熟児で産まれた我が家の双子は発達障がいだ。毎日がハプニングの連続。育てにくさに悩んでばかり。出来ない事だらけの二人を怒ってばかり。怒っては自己嫌悪に陥る日々だった。
 そんな二人の五歳の誕生日の思い出。二人はぬいぐるみが大好きで、まるで命があるように大事にしていた。雷が鳴らば家中のぬいぐるみをベッドの上に集め、その中に埋もれて雷から身を守る。私が汚れたぬいぐるみを洗濯機に入れると、小さな窓から二人で中を覗き込んで「ママ。止めて。目が回るよ。かわいそう」と号泣するという具合だ。誕生日には二人が大好きなプーさんのケーキを用意した。箱を開けた瞬間、満面の笑みを浮かべ、ロウソクの火に照らされた二人の目はきらきら光り、食い入るようにプーさんのケーキを眺め、うっとり幸せそうな顔をしていた。
 ところが、ケーキを切ろうとした瞬間、一気に地獄に突き落とされたかのように「やめて。ぷーさんを切らないで」と二人で大声で泣き叫ぶ。隠して切ろうとしても、しつこく後ろをついてくる。とうとうその日はケーキを食べることを諦めた。次の日もトライするものの食べられず、やっと食べられたのは三日目だった。あんなに泣いたのにとても美味しそうに食べる二人に笑いが止まらなかった。
 発達障がいを理解されなかったことも沢山あったけれど、二人は毎日を一生懸命生きている。家族に数え切れない程、沢山の思い出を残してくれた。楽しい思い出ばかりではないけれど、今となってはその全てが愛おしい大切な日々だ。
私達夫婦を人間として成長させてくれた。ぷーさんを切れなかった心優しい子ども達の純粋な気持ちが、宝石のようにきらきらしている。二人を出産する時、障がいが残るかもしれないと泣いた私に、父が言った一言。
「どんな風に生まれようとそのままを大事にすればいい」
差別なき世界の中であなたがあなたらしく輝けますように。