とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第52回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


おおきな勇気

「おおきな勇気」

埼玉県 Y・K(会社員 30代)

 心臓疾患があるため、普段はヘルプマークをつけて通勤している。これは見た目では分からない病気や障がいを抱える人たちが支援や配慮を必要としていることを周囲に知らせるものだ。確かにマタニティマークに比べると認知度は低いが、ありがたいことに電車内では席を譲って頂くことが多い。
 ただ一日だけ自らの不注意でヘルプマークを忘れてしまった日がある。その日は案の定途中駅から息苦しさを感じ始めた。だが朝のラッシュ時は優先席も満席。途中下車しようにも身動きがとれないような状態。降車駅まではあと少し。最初は何とかなると信じた。祈った。願った。だけど自分の身体は思うようにはいかない。急に激しく身震いし、呼吸が荒くなった。その時だ。
「だいじょうぶですか。」
 見ればランドセルの女の子だった。小学校四年生くらいだろうか。私が首を横に振ると「だれか、せきをゆずってください。ぐあいのわるい人がいます」と声をあげた。嬉しかった、本当に。涙が出そうになるほど。
 その後、車内の方々の厚意により、事なきを得たが、ちいさな少女のおおきな勇気に感謝が止まらなかった。
 確かに目に見えない疾患を持つ私にとってヘルプマークは大切な意思表示。マタニティマーク同様、命を守るための大切なサインだ。
 だけど幼くても、ステッカーじゃなく、人の顔や心をしっかり見てくれる人はいるものだ。他人を思いやる気持ちに年齢は関係ない。すべてはハートひとつ。目の前の人を助けたいという気持ちひとつなんだ。
 そう確信したこの日。この国の未来は、きっと大丈夫だと、胸を張って私は電車を下りた。