とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第51回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


デッドスペース

「デッドスペース」

長野県 T・Y(公務員 60代)

 「三番線に電車が入ります。黄色い線まで下がってお待ちください」構内のアナウンスが鳴り響きます。
 電車で通勤を始めてから、五年が経ちます。電車で通うのは何と高校生以来、四十年ぶりでした。最寄り駅から終点まで、毎日片道一時間近く電車に乗って通勤しています。年を取ると、結構この一時間の乗車がきつくて、空いている席を探して座っています。
 この電車は、四人掛けボックスシートが中心です。この四人掛けのシートに、皆さんはどういう順番で座りますか?
通常、はじめの人は、窓側の席に座ります。次の人ははじめの人の対角線、通路側に座ります。さて問題は三人目がどこに座るか。座りやすい場所は、二番目の人の前、通路側に座ります。すると奥の窓際の席がデッドスペースのようになってなかなか座りにくいです。自分が大きな荷物を持っていたり、通路側の人が眠っていたりすると、なかなか声を掛けて奥のデッドスペースに座るには、覚悟が必要です。
 そんなある日、発車間際に疲れ果てて載った電車の空席がデッドスペース席一つでした。立っている人も何人かいました。動き出して数駅過ぎれば、座席も空くのでしょうが、疲れた体には座席が恋しかったのです。そのデッドスペース席に座ろうと「すみません」と声を掛けたのですが、片側の人は眠っている様子で気が付きません。もう片側に座っていた女子高生が気付いて、奥に詰めてくれたのです。「ありがとうございます」と言って通路側の席に座らせてもらいました。
 それからというもの、三番目になったら、必ず奥の席に座るようにしています。もし二番目になって窓際のデッドスペースができてしまったら、必ず奥に詰めるようにしています。あの女子高生を見習って。