とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第51回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


あの時のどこかのお母様へ

「あの時のどこかのお母様へ」

大分県 K・H(主婦 50代)

 ちょうど三十年前、大阪の小さな公園で、やっと歩き始めた娘と砂遊びをしていた時、子供服をたくさんいただいたことが、大変うれしくてとっておきのワンシーンをお届けしたいと思います。
「あっいた。
 子供の古着ですが、着れるものがあればどうかな?と思って。うちは子供が多くてね、この子が一番下で、来年から学校に上がるので、それにもう少ししたら引っ越すので片付けているの。
 あなたにあげようと思って……失礼でなければどうぞ」
「うれしい。ほんとによいのですか?
 住所とお名前、教えて下さい。お礼をします……」
と言ったのですが、
「いえいえ、ほんとにゴミになったら、ごめんね。着れなかったら処分してね」
 すぐに会釈して帰って行かれました。
ゴミなど一つもなかったのです。昭和の時代の木綿の柔らかいブラウスやスカート、それに手作りらしい毛糸のベスト・セーターなどたくさん。
 毎日、洗濯がまにあうくらいのいつも同じようなシャツとズボンで過ごしていた自分と娘。夫も毎日仕事着でした。
 かわいい木綿のブラウスに毎日アイロンをかけて、きれいに着させていただきました。
 次に生まれたのが男の子で、ちょうど妹のところに双子の女の子が生まれたので、全部譲りました。いただいた洋服はあちこちで、充分役立ち、娘も三十歳の大人となりました。
 アルバムを見るたび思い出します。
何もお礼も出来ないままで申し訳なく思います。どうかあの時のお母様に、感謝の気持ちが届きますように。