とっておきのワンシーン
作品紹介

─ “思いやりの原点”って何だと思われますか? ───

思いやりの原点は共感。
相手に関心を持ち
相手の話や状況に共感することができれば、
相手の話や状況が自分のことのように感じられ、考えられ・・・、
自分が言って欲しいことや、自分もして欲しいことを、
言ったり、して差し上げたりできるんですね。

これからご覧頂くワンシーンに、皆さんは共感されるでしょうか・・・。
この作品紹介コーナーでは、最新の公募作品を紹介させて頂きます。

─ 第48回とっておきのワンシーン入賞作品の紹介 ───


Fちゃんの勇気

「Fちゃんの勇気」

兵庫県 T・S(アルバイト 70代)

 この親にしてこの子ありに当てはまった娘。
ひどい人見知りの父に似てしまったせいで、幼稚園生活は大変だった。人前だと全く喋れずに俯きっぱなし、いつまでも縮こまったままで、先生をやきもきさせた。
 父娘が一緒に幼稚園の授業体験した父の日。
竹馬作りまでは何とか順調だったが、それぞれ父親が娘のいいところを語る場面で大ハプニング。先生の指名で順番に父娘が起立するのだが、なんとわが父娘は指名されないまま終わってしまった。
娘は勿論、私も「まだ呼ばれてません」と言えない情けない性格。園生活で影の薄い存在の娘を、先生はうっかり忘れたんだと察しながら
(いいさ。いい雰囲気に水を差すぐらいなら黙っていよう)
で済ませる気になり、俯いた。ちらちら窺う娘の視線は感じたが、なおさら緊張が募った。
「それじゃ、今日はこれで終わり……」
「先生。Sちゃんのお父さん、まだだよ」
 締めくくろうとした先生にストップをかけたのは、ひとりの女の子。会場が一瞬ざわつくのを感じ、余計に体は固まった。
「あ?本当だ。申し訳ありません、Sちゃんのお父さん、まだでしたね。それじゃあSちゃんのお父さんに、お話しして頂きます」
「Sちゃんもお父さんも、早く早く」
 あどけない口調の後押しを受けて、やっとこさ笑顔で立ち上がれた。娘のいいところを何とか語ると、満面笑みの娘に気付いた。みんなの拍手に照れながらも幸せに包まれた。
「Fちゃんていうの。お友達だよ」
 帰る車の中で、やっと口を開いた娘。人見知りの娘に友達がいたと初めて知ると同時に、Fちゃんに救われたことに感謝しきりだった。
「へぇ、よかったね。Fちゃんも大人しい女の子なのに、ちゃんと言ってくれたんだ」
 妻が教えてくれたFちゃんは娘と同じような性格。それなのに友達を可哀そうに思い、勇気を奮ってくれたのかと、ホロッときた。
 いま娘と友達は保育士として頑張っている。